■皆さん、こんにちは。
今日は、"現場第一主義"についてお話しします。
■新たに就任した社長さんが当社の方針は"現場第一主義だ"と宣言
されることがあります。
■ところが、実際にはこれがうまくいかないのも事実です。
こんなことがありました。
■あるとき、株主総会で新たに承認されたある会社の社長が "現場
第一主義"を掲げました。
そして、現場を自ら見て歩くことにし、秘書に視察計画を作らせる
ことにしました。
■やがて、秘書は、社長の視察計画を作成して、その計画を各担当部
長に知らせ、自分の担当部の現場視察のときには、社長に同行する
ように指示しました。
■それを、知った部長は、あわてて自分の部下の各課長に指示を出し
ました。
「社長視察がある。見苦しいところがないように、全て整理整頓し
なさい」
「『社長が来れた時には、どんな質問がきても、全て問題ありませ
ん』と答えなさい」
■ただ一人の課長を除いて、全ての課長は、部下に指示を出しました。
「社長視察がある。現場をすぐに整理整頓しなさい」
ある現場の長はこう言いました。
「課長、お言葉ですが、進行中の現場を片付けると、また、仕事を
再開するのに非常なロスになります。これでは現場は困ります」
しかし、その課長はこう答えました。
「社長が現場第一主義を掲げて、現場を視察される。社長に醜い所
を見せる訳にはいかない、我慢してくれ」
それを聞いた現場の長は、しぶしぶ現場を整理整頓しました。
■だだ、一人、ある課長は、部長からの指示を無視しました。
部長からの指示に「わかりました」
とだけ答え、一切自分の部下に現場の整理整頓や社長視察のことは
伝えませんでした。
■社長視察当日がやってきました。
大半の現場では、何も問題なく、社長視察が終わっていきました。
■そして、ついに、一切部下に指示をしなかった課長の現場に社長が
やってきました。
その現場には、工事用の機械が所せましと置かれ、今にも重機に当
たりそうな危険な状態で作業員は仕事をしていました。
もちろん、作業員は、社長視察のことなど知らずに、黙々と仕事を
しています。
■これを見た社長は驚き、そばにいた部長に尋ねました。
「他の現場と違い、ここの現場はなぜこんなに危険な状態で社員に
作業をさせているのですか」
■あせった部長が思わず答えました。
「担当課長が、社長視察のことを現場に伝えなかったからです。申
し訳ありません」??
■さて、
□□□ 今日の「ちょっと一言」です。 □□□
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【 予告なしに一人で現場へ行かなければ本当の現場は分からない 】
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■"会社の幹部の持つ情報は単色になりがちで、本来の天然色の情報
が上に上がってくる間にアク抜きされてしまう"と、土光敏夫さん
もおっしゃっています。
■"そんな単色情報に基づいて、間違った判断をしたら大変なので、
単色情報を天然色情報にもどすためには、自らの足で現場を歩き、
自らの目で現場を見ることだ。現場の空気を味わい、働く人々の感
覚に直に触れることによって、抽象化された情報は、急に具体性を
帯びて生き生きとしてくる"ともおっしゃっています。
■これは、正論なのですが、生の現場を見られると困る人間が多くい
るのも事実です。
現場が長かった私の経験からも、水戸黄門のように誰にも知らせず
にお忍びで現場に行くしか、本当の現場は分からないような気がし
ます。