■皆さん、こんにちは。
しばらく発行を怠っておりました。申し訳ありません。
今日は「立場の弱い人を見下すこと」についてお話しします。
■昔、ある訪問先の職場でこんな光景を見たことがあります。
工事の発注担当である入社2年目の若造が、その工事の請負先の
担当部長を相手にしている場面です。
どうやら工事の期限が守れないことで議論しているようでした。
■50歳を過ぎるであろうと思われる上品な部長がその若造に頭を
ペコペコと下げて平謝りをしていました。
「本当に申し訳ございません。追加発注をいただいた材料の納品
が遅れておりまして、どうしても完成が一週間遅れます。どう
かお許し下さい」
その話を聞くやいなや、若造は言葉を荒げて
「お前のところの会社は、1週間前に注文した材料も手配できな
いのか。そんな会社なら今後は発注先をかえる」
「それに、あんたいい年をしてまだ部長のままか。あんたの能力
に問題があるな。家族もよくがまんしとるな」
■この若造は、一流企業の工事発注部署に所属していました。
入社2年目なんかでは、ろくに仕事もできないはずです。
しかし、大企業や、仕事の発注側にいると、ろくに仕事もでき
ないうちからなんとなく偉くなったような錯覚に陥ります。
自分の父親のような人間でも、たまたま下請けであるいう理由
で、チヤホヤしてくれるからです。
■この若造も、入社1年目のときには、自分よりはるかに年上で、
しかも仕事のできそうな請負先の部長に持ち上げられると、違
和感があったに違いありません。
ところが、1年も経つとこの状況に慣れてしまう。
会社の立場が強いだけなのに、自分が偉いと勘違いしてしまう
のです。
そして、上の発言のように相手の人格まで傷つけてしまうので
す。
■この傾向は、国のエリートにも発生しています。
国家公務員のⅠ種に合格したような若者は、数年もすると、経
験を積ませるという名目の元に地方に出向させられます。
地方での地位は、課長クラスの場合もあります。
当然、地方では、「数年しかいらっしゃらないから、何事もな
く帰っていただこう」ということになります。
■ですから、年配の部下も彼のことをチヤホヤするだけで、本気
で仕事を覚えてもらおうとは思いません。
ここで、また若造は自分は偉いと勘違いしてしまいます。
そして、目の前で愛想笑いを浮かべる自分の親よりも年配の人
を見下してしまいます。
おまけに、この見下した気分は、必ず相手に伝わってしまいま
す。
■さて、
□□□ 今日の「ちょっと一言」です。 □□□
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【 立場が自分を持ち上げていることを忘れるな 】
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■このことを経験させるには、本当は、立場を逆にした職務に着か
せることが一番なのです。
例えば、先の国のエリートの出向であれば、市民相談係の窓口担
当の平にすることです。
そうすれば市民の皆様から直接、ご意見を聞き、また苦情の処理
をして、立場の弱い人を経験できるからです。
■しかし、実際には、企業にしてもお役所にしても、こんなことは
できません。
そうであれば、少なくとも、若者は、「最初にチヤホヤされたと
きの照れや違和感を持ち続ける努力をしなければ、イヤな人間に
なってしまう」ことを心底理解することが必要です。