今回は「お布施」についてお話しします。
仏教で使われる言葉ですが、宗教に偏った話ではありません。
人の生き方の話としてお読み下さい。
■私は、田舎の農家の七代目として生まれました。
初代は江戸時代にこの家に生まれています。
家紋は、あの大財閥三菱の創業者岩崎弥太郎さんと同じく「三つ
柏」です。
皆さんが柏の葉を目にするのは、5月の節句に柏餅をいただくと
きくらいでしょうか。
三つ柏の家紋は、その柏の葉が丁度ベンツのマークのように三つ、
120度毎に配置されています。
■今の三菱さんのマークは、岩崎弥太郎さんの家紋である
「三つ柏」を元に柏の葉をひし形に変えてできたものであると、
誰かに聞いたことがあります。
■そんなことは、さておいて、七代続く家ですから、仏壇には仏様
が13人いらっしゃいます。
その中には、今から37年前の同じ年に亡くなった私の父と祖父
もいます。
お盆になると、お寺さんが一軒づつ各戸を廻ってお経を唱えられ
ます。
私たちも、その後ろでお経を唱えます。
私はこれを13歳のころから37年間続けています。
■私がまだ若い頃、お寺さんが我が家に来られたときのことです。
私は、かねがね疑問に思っていたことを尋ねました。
「後ろで、お経を唱えているのですが、僕には全く意味が分かり
ません。意味が分からず、お経を唱えて価値があるのでしょうか」
お寺さんは、この生意気な子供に、ニッコリと笑って答えられま
した。
「お経の意味は分からなくてもいいのですよ。君は今、意味が分
からずともお経の文字を追いかけて、それを声に出している」
「そのときは、無心でお経の文字を追いかけているはずです。他
のことを考えていては、到底、この速いお経を唱えることがで
きないのですから」
「たとえ、10分でも、無心の境地になる。これが大事なのです」
今考えると、確かに、雑念を排除して無心で文字を追いかける、
そんな時間も必要な気がします。
■ところで、そのお寺さんがよく唱えられるお経に「修証義」とい
うものがあります。
これは、道元禅師の有名な主書「正法眼蔵」九十五巻の中から、
比較的平易なところを選び抜いてまとめられたものです。
いわば、「正法眼蔵」のダイジェスト版です。
生を明らめ死を明らむるは仏家一大事の因縁なり、生死の中に
仏あれば生死なし、・・・
から始まる5章から構成されたお経です。
■その「修証義」に「布施」について書かれているところがあり
ます。
仏教では、お寺さんがお参りになったときに「御布施」として、
金銭をお渡しします。
街中で托鉢をされているお坊さんにお渡しするのも「御布施」
です。
■「修証義」には布施についてこう書かれています。
衆生を利益すというは四枚の般若あり、一つには布施、二つに
は愛語、三つには利行、四つには同事、これ則ち薩埵の行願な
り、其の布施というは貪らざるなり、我物に非ざれども布施を
障えざる道理あり、其物の軽きを嫌わず、その功の実なるべき
なり、然あれば則ち一句一偈の法をも布施すべし、此生侘生の
善種となる、一銭一草の財をも布施すべし、此施侘施の善根兆
す、法も財なるべし、財も法なるべし、但彼が報謝を貪らず、
自からが力を領つなり、舟を置き橋を渡すも布施の檀度なり、
治生産業固より布施に非ざることなし。
■その意味は(「修証義に学ぶ」佐藤俊明著 現代教養文庫)を
参考にすると、こうなります。
人々のために利益を与えるということには四つの智慧がある。
一は布施、二は愛語、三は利行、四は同事であり、これは菩薩
の誓願であり、実践である。
布施というのは、貪らないことことである。だから、自分のも
のでなくとも布施をすることができる道理がある。
布施は、施す物が軽少であってもよいが、心がこもってなくて
はならない。
従って、一句でも一偈でも、一銭でも一草でも布施すべきであり、
その功徳は、現在及び将来においてよい果報を受ける善い原因と
なり、善いおこないとなる。
法を施してそれが財となることもあり、財を施してそれが法とな
ってあらわれることもある。
布施をしても返礼を期待せず、自分の力をわけ施すことが肝要で
ある。
舟を運行したり、橋を架けて交通の便をはかるのも布施であり、
職業もまた布施となるのである。
以上が、佐藤俊明さんによる布施の解説です。
そして、布施には、法施と財施があるそうです。
ものの道理に明るい人が、道理に暗い人を導いてやる、生きる道
に悩む人に仏の道を伝え、光明を与えてやる、これが法施だそう
です。
また、物を持っている人が人に物を施し与える、これが財施だそ
うです。
■さて、
□□□ 今日の「ちょっと一言」です。 □□□
──────────────────────────────
【 布施とは、人々の役に立つために自分のできることをすること 】
──────────────────────────────
■私は、布施とはお寺さんにお渡しするものだと思っていました。
どうやら違うようです。
形式的にはお寺さんにお渡しすのですが、お寺さんを通じて、
世の中の役にたててほしい。そう願ってお渡しするものでした。
■世のため、人のために尽くす。
政治家も法施をする人です。
そして私たちから預かった大事な税金もいわば財施の一つです。
私心なく、「世のため、人のために尽くす」ことに使ってほし
いものです。
決して、自分たちのためにではなく。
■フォレスト出版さんの本の投稿サイトSpotWriteに
私の体験をモデルにして「人生いかに生きるべきか」を
示した物語 「うしのフットボール」を投稿しています。
お読みいただければ幸いです。
「うしのフットボール」
https://www.spotwrite.jp/ranking.cfm

コメントする