■皆さん、こんにちは。
今日は「上司からの批判と部下の対応」についてお話しします。
■どこの職場にも部下がいつもびくびく怯えているような激しい
気性の上司がいるものです。
皆さんの職場にもいるのではないでしょうか。
■昔こんな話を聞いたことがあります。
ある会社(X社)での会議のことです。
その会議は、ビルの建設工事を議題に開催され、担当責任者であ
る専務取締役を筆頭に、工事部長、課長3名以下30人が出席し
ていました。
■A係長が、ビル建設工事の工事工程を説明し終わったすぐのこと
です。
A係長の上司のB課長が、大声で怒鳴り出したのです。
「お前は、大学を出て何年になるんや。こんな工程で工事が終わ
ると思うんか。時間の無駄や」
A係長は、皆の前でコテンパンにやられてしまいました。
実はA係長は、専務取締役も参加するとあって、この日のために
毎日遅くまで部下とともに残業を重ねてきたのでした。
そして、説明した工程にも自負がありました。
■しかし、B課長の発言を聞いて、A係長はすっかり落ち込んでし
まいました。
それ以後、会議中はじっと下を向いているだけになりました。
会議が終わって、一ヶ月が経過しましたが、A係長の頭からはB
課長に怒鳴られた記憶が抜けない状態が続いていました。
■そんなある日、部下がA係長に相談にきました。
「係長、大変なことが分かりました。実は工事予算の単位を誤っ
ている項目があることが分かったのです。
ざっと、計算し直すと、増加額は5億円になります」
「すぐに、課長に報告をお願いします」
A係長は下を向いたまま答えました。
「分かった・・・」
■実は、このビルの建設工事は、X社との共同工事で、既に契約が
済んでいました。
そして、その契約内容は
「総工事費11億円、X社が施行し、Y社が5億円を負担する」
となっていました。
つまり、総工事費が増加すれば増加分は全てX社が負担すること
になり、また共同建設なので、中止するわけにはいきません。
■それから、2カ月が経過し、ビルの完成が近づいた頃、事件が起
こりました。
どこからか、工事費の積算が誤っていたことが、社長に伝わった
のです。
■社長に呼ばれたA課長は何のことだか分かりません。
「君は5億円をどうするつもりや。もう少し早く分かっとったら
何とかなったんや。もう手遅れや。君に払ってもらうで」
この一言とともに、A課長は関係会社に左遷されました。
■それから1年後
B係長は関係会社の玄関でA課長にばったりと会いました。
A係長はまだあの会議でのことが忘れられません。
そこで、もう上司でないということもあって、おそるおそる聞い
てみることにしました。
「Bさん、あの会議のとき、Bさんが私に求めておられたことが
今だに分からずに困っています。私に恥をかかせるだけが目的
であったとは思いたくないのですが」
■それを聞いたBさんは、驚きました。
「いや、私には君に恥をかかせようという気など、まったくなか
った。事実あの工程はよく検討されていた。ただ、少し詰が甘
いところがあって、一部見直してほしいと思っただけや」
「君がそう受け取っていたなら申し訳ないことをした」
Bさんは、A係長に謝りました。
もちろん、BさんはA係長が工事費の積算が誤っていたことを事
前に知っていたことなど、知るはずがありません。
■さて、
□□□ 今日の「ちょっと一言」です。 □□□
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【 人間性を批判するな。仕事の問題点を批判せよ 】
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■B課長はA係長の人間性を批判してしまいました。
そのことで、A係長は、批判の対象が仕事の内容ではなく、自己
の改善不能な欠点にあると思いました。
そして、また批判されるのを恐れて、自分の殻に閉じこもってし
まったのです。
■では、この場合B課長はどのように批判すればよかったのでしょ
うか。
こうなると思います。
「この工程で最大の問題点は、工事に時間がかかりすぎてコストが
高くなってしまうことや。もう少し考えてくれるか。特に、クリ
ティカルパス上の鉄筋の組み立てと、配管の埋め込を同時にでき
ないかを」
■B課長が会議でこういっていれば、A係長は殻に閉じこもること
なく、具体的な改善策を検討することができました。
そして、工事費の積算誤りもB課長に報告していたことでしょう。
■また、批判を受ける側はどうしたらいいのでしょうか。
これには、コツがあります。
批判を自分に対する個人攻撃とは考えず、改善のための貴重な助
言だと受け止めることです。
なぜなら本当の個人攻撃は、自分と対等な相手に対してなされる
場合が多いのですが、通常、上司は部下を自分と対等な相手とは
見ていません。
つまり、上司は、改善を要求しているのに、その伝達テクニック
不足が原因で、結果として個人攻撃として受けとられている場合
が多いからです。

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